利用者にとってのメリットと運営の課題

2013年頃から、厚生労働省が地域共生型サービスの導入に取り組み始めました。地域共生型サービスが目指しているのは、ノーマライゼーションの理念に基づき、年齢や障害の有無に関係なく幅広い年代の人々が共生できる環境づくりです。

サービスの推進によって、高齢者や乳幼児、何らかの障害を抱える人々を一体的に受け入れる幼老複合施設が少しずつ増え始めています。2017年2月時点、要介護者と育ち盛りの子どもを抱えて苦悩している人は約25万3000人に上ります。ダブルケアを担っている家族にとって、高齢者と子ども向けの福祉サービスが一元化されていく潮流は非常に喜ばしいことかもしれません。

施設の利用者である高齢者や子どもは、どのように感じているのでしょうか。高齢者は、小さな子どもを守りサポートしていくという社会的な役割を通じて誇りが持てるようになるでしょう。生き甲斐を見いだせることにもつながり、日々の生活が充実すると考えられます。

一方、子どもは、高齢者や障害者との交流を通じて、人間的に成長できます。実際に、障害者と健常者が一緒に教育を受けることによって、大きな効果が得られた事例は多くあります。しかし、多種多様なメリットがある幼老複合施設にも、課題が散見されます。

その一つが人員の確保です。幼老複合施設の運営には、一定数の介護職員と保育士が必要になります。しかしながら、介護職員も保育士も人材不足が懸念されています。理想的な幼老複合施設を運営するためにも、人材確保のための待遇改善を図る必要があるでしょう。